納得いかないので妄想でED変えてみた

幻想水滸伝 紡がれし100年の時」のEDが納得いかないので妄想で補ってみた。

主人公名:レイ/団体名:トルラディア/砦名:ロルフェン砦

※クリア後のネタバレ&原作と違う展開ご注意。

イオニアによる結界が壊れた後、人々は広い世界へと踏み出して行った。色々と後片付けの残っていたトルラディアの主要面子は出発するのが遅くなっていたのであるが、季節が春になる頃出発することに決めた。
主要面子と言うのはトルラディアが旗揚げしたあたりから森羅宮に攻め込んだ際にまで基本的に最前線で戦ってきた面々のことだ。
つまり、団長であるレイ、軍師のレギウス、最初の構成員であるミュラ、保護者兼苦労人のモーディ、元朱キ斧のザヴィド…そして、レイ達が旅立つきっかけを作ったゼフォンの6人その他である。
しかし、最前線の6人のうちの半分は戦いの後に新しい世界へ行くという予定ではなかった。

例えばレギウスは…ヒオニ山やアイオニアに残っていた「禁書」こと魔術関連の書物はレギウスの指示の下、魔石職人であり魔術研究者のフォルネを中心として分析を進めることになった。
元々、レギウスはそちらに加わるためにこの箱庭世界に残る予定であったのだが、新しい世界に旅立つにあたってレイがレギウスに付いて来て欲しいと頼みこんだためこのような形になった。
ミュラが「昨日までアイオニアに留まるって言ってたのに。どうしたんだ?」と聞けば、レギウスは目を細めて、「レイのあのまっすぐな目で、『レギウスも一緒に来てくれないか。一緒に戦ったみんなで、一緒に外の世界に踏み出したいんだ。…勿論、僕のわがままなのは良く解ってるんだけど』なんて頼みこまれたら断れませんよ」と答えた。

別の者も同様だ。

まずザヴィドは、元々アイオニアへの復讐を動機に生きていたため、ある意味もはやこの世界に居場所を持たなかったが、
ミュラやルルサに「トルラディア以外で安心して飯が食える場所がお前にあるのか」と問い質されてハッキリ断れなかったところを、レイに「外の世界はもうアイオニアも朱の斧も関係ない所だと思うよ。気に食わなかったら帰ってもいいし…。だけど、一緒に見に行くくらいはしてみないか」などと上手くほだされて、結局レイ達に付いていくことになった。
不本意そうには見せていたが内心は安心していたに違いない。

モーディは元々レイ達とは別でホドス村の人々と向かう予定だった。
ただ、前述のレギウス・ザヴィドといった一匹狼の態度の変化に感化されたようで、「わしも付いていくことにした!森羅宮でも怪我ばかりしおった危なっかしい若いモンばっかりで誰が治療するんじゃ?手先が不器用でおっちょこちょいなイリア一人で手が足りるわけなかろ?わしが必要じゃろ?ん?」とかなんとか言い出した。
苦笑しつつレイがホドス村の人々のことを尋ねると、フェアピークかオロスク村の先遣隊に任せることにしたのだという。

ただ、ゼフォンだけは少々違う事情があった。

森羅宮に向かう前の晩、星空の下で時代樹を見上げていたゼフォンに声をかけたのはレイだった。ゼフォンは軽やかに振り返って尋ねた。
「ねえ、レイ。アイオニアを倒して結界を解いて外の世界に行けるなら何をしてみたい?」
レイは数秒、黙ってゼフォンの目を見つめ返した。
「そうだな、まず一緒に戦ってきたトルラディアのみんなで一緒に外の世界を見たいな」
ゼフォンはぷっと噴きだして笑い、「なにそれ全然夢がないじゃん」と貶した。
そのゼフォンの様子に、「いいや、これが僕が一番したいことなんだよ」とレイは笑って、
「なあ、ゼフォン。約束しないか。明日戦うみんなで…僕とゼフォンと、レギウスとミュラとザヴィドとモーディさん…誰も欠けずにみんなで新しい世界を見に行こう。前ゼフォンが見せてくれた、ワイバーンの巣の先にある結界の場所から」と、真剣な表情で言った。
勿論ゼフォンは苦笑して、「キミはそんなこと言うけど、何があるかわかったもんじゃないんだよ?」と流そうとするが、「ゼフォン、約束だよ」とレイも譲らない。
その頑固さに、わかったわかったとゼフォンは繰り返し口にしてレイを帰した。
「レネフェリアスを止めて僕は眠れると思ったんだけどな。レーテみたいに…。でも仕方がないか。レイは、トルワドやアストリッドにいちいち忠告しにいくようなお節介真面目君なんだしね。ふふ、まあ面白そうだし、行けるところまで行ってみようか」
ゼフォンの手の中の宝珠は月光を受けてきらりと輝いていた。

「みなさん準備はよろしいですか」
レギウスの落ち着き払った声が食堂に響く。返事をしたのはレイ、ミュラ、ザヴィド、モーディ、ゼフォン…そしてミュラの弟のジーノと、テルベの里馴染みのイリアだ。
「特に薬と呪石はいつ補充できるかわかりません。十分過ぎる備えをしてありますね?」
「レギウスに言われると、ちゃんと持ってきたのに再確認したくなっちゃうよね」と苦笑するのはゼフォンだ。
「私の石はジーノが管理しているから問題ない」と、ミュラ。
「大丈夫だ。姉貴とゼフォンが使いまくっても大丈夫なように沢山持ってきたし、材料も沢山持ってる」と自信満々に言うジーノ。
「薬ならニドさんが持ちきれない程くれましたから」とイリアが言えば、
「だからって持てない分をわしが持つことになるのはなぜなんじゃ!年寄りをこき使いおって」とモーディが文句を言う。
「念のために持ってはいるが、呪石を使う機会は前より減るはずだ。テラスファルマやアイオニア兵と戦うことは無いからな。その辺の猪に呪術を掛ける必要はない」と、ザヴィド。

「では、団長。出発の号令をお願いします」
「わかった。みんな、聞いてくれ」
レイは席を立って、全員の目を順番に見て行った。
「本当は、今日一緒に外の世界にいくはずじゃなかった人も居ると思う。だけど、一緒に行くと決めてくれた。ありがとう。僕は一人じゃアイオニアに立ち向かえなかったし、戦いが終わってもみんなが居なかったら何をすればいいのかわからなかったと思う。僕は、悪いけど、これから何をするのかなんて決めてない。だから、みんなと一緒に広い世界で見つけていきたいんだ。これから何をするのか、どんなことをしてみたいのか。一人じゃ見つけられなくてもみんなが居てくれれば、きっとみんなと何かを見つけていける気がするから」

ワイバーンの巣の坂道を駆けあがっていく姿が見える。
先頭を駆けていくのはジーノ、その後ろをミュラとイリア。若者三人に小言を言って速足で歩くのはモーディ。前の四人を見てクスクスと笑っているゼフォンと、そんなに走るとまた転ぶぞと呆れているのがザヴィド。
「こういう気楽な旅もいいですね。新しい世界を旅するのに忍者は廃業しましょうか」と珍しくレギウスが笑えば、
「そうだね。料理人とか…?」と、レイ。
「御冗談を。ロルフェン砦の食事に慣れた皆に私の稚拙な料理を食べさせるというのですか」
「あはは、冗談だよ。レギウスがエプロンつけて料理してる所なんて想像できないや」

新しい世界は広いだろう。
迷うことも、大きすぎて戸惑うこともあるに違いない。
けれども、彼らには共に新しい世界へ踏み出していく。

―――絆という、仲間という、かけがえのないものがある限り、存在する意味を見いだせる気がするから。