金色の願い(前編)

※物語終了後のネタバレを含みます。
男主人公→イザヤール のBLになります。
※寂しいのでありえないハッピーエンドにしてみた。不評は受け付けませんwwwwww

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「ねぇ、何で最近この辺をウロウロしてるワケ?」
サンディに話しかけられ、海に向けていた視線を船内に戻した。
「…ぬしさまがまた果実拾ってないかなって」
「そんな都合よく落ちてるわけねーだろ」
「そうよ、もしまた変なやつが拾ったら大惨事よ〜」
仲間にもつっこまれてため息をつく。まさかの女神の果実を食べて、アギロやサンディが見えるようになったことには驚いた。ならば、もう一度果実が手に入れば、叶えられるのではないかと思ったのだ。
(あの時、なんで僕は特に何も考えずに食べたんだろ…)
金色の果実を口にした時、ただ思っていたことは、今寂しい、また賑やかな旅に戻りたいという想いだけだった。
「果実をもうひとつ見つけられれば…イザヤール様を生き返らせるのに」
その小さな呟きを聞き届けた者はおらず、声はさざなみの音にかき消された。

船を進めても果実が落ちているわけがない。そう分かっていても、一度は落ちていたという事実にまたすがってしまいたくなる。自分はこんなに弱かっただろうか。人間になったからなのだろうか。これが欲というものなのだろうか。今日何度目かわからないため息をついて、同じく今日何度目かわからない海賊ウーパーを倒してその場に座り込んだ。
(仲間を置いてきて正解だった)
巻き込んでは悪いと思って三人はリッカの宿屋においてきたし、サンディはアギロに預かってもらったから今日は単独行動だ。
「…星になるってどういう気持ちなんだろ」
ふと目から涙が流れた。
「もし僕が、イザヤール様より先に星になっていたら…どう思うだろ」
キメラが視界の隅でバタバタしているのが見えた。
(もし死んでいたのが僕だったら、イザヤール様は探してくれただろうか)
問いには誰も答えてはくれない。だけれども、変な確信はあった。
「…そうだよね、きっと探してくれてた。エルギオスを数百年も探し続けていたような人だから。僕も、探してる。探しても探しても居ないってわかってるけど」
探さずには居られないんだ、唇を噛んで言葉を飲み込んだ。

プライベートビーチからルーラで移動して、いろんな町を回ってみた。羽根を失くして飛べなくなって、ルーラを使うことを覚えたけれど、羽根があったときのような自由さはない。それどころか天使をやめてからは、悩みが尽きない。苦しくて、早く楽になりたかった。
「夜か…」
仲間が心配してるだろう。ふと、歩きたくなってウォルロ村から峠を越えて宿屋に戻ろうと思った。見上げた空は深い藍色で、沢山の星がきらきらと輝いていた。
「みんなは、星になったのかな」
手を伸ばしても届くはずはないけれど、この願いが聞き届けられないかなとひたすら手を伸ばす。…ただ、上を見上げていると首が痛くなりそうで、石につまづきかけたのをきっかけに空を見るのはやめにした。
「果実にお願いすればよかった。イザヤール様が戻ってくればいいのにって」
むげんの弓を構えて、星が沢山見える方向に向かって射てみようと思った。打ち落とせたら、願いが叶わないかな、そんなありえないことを夢見て、矢を放ち、目を閉じた。