毛伝説

美しいブロンドの髪がさらさらと風にそよいでいる。ストレートでひっかかりがなく、女もうらやむ美しい髪を持つ天使エルギオス。しかし彼にはそれゆえの悩みもあった。

「わたしの髪の毛を呪術に使う輩がいるだって?」
「そう聞き及びました」
「確かに髪というのは魔力の象徴だが…髪程度でわたしに傷をつけられるとでも思っているのだろうか」

師匠はそう余裕ぶっていたけれども、私は見てしまったのだ、人型に髪を縫いこんで使う呪術のせいで師匠が大怪我を負って地に落ちるのを…
敵はコレを狙っていたのだ、髪の毛をつかって彼の代わりとなる人形を利用すれば、直接傷をつけることが難しい強靭な彼にも少しは怪我を負わせることが出来るのではないかと。私はこの事実を重く受け止め、師匠を探す傍ら、自分の髪は全て剃って、師匠の二の舞にはならぬようにしようと固く誓ったのだった…

「というわけでナイン、天使修行は髪を全て剃ってからだ」
「ええっ、そんな無茶な!」
「無茶ではない!安全を期してのことだ!安全第一!隙を見せない!」

ナインは三日三晩抵抗してやっと許してもらったという。その代わり抜け毛には気を使うこと、敵に頭を狙われないように気をつけることなど口うるさく言われることになったようだ。(終)