太陽神の贈り物を尋ねて6

ルイーダの酒場を出たイザたちは再びアリアハンの港へ行き、バハラタ行きの船に乗った。
ランシールからアリアハンに向かうよりもはるかに時間はかかったが平和な船路で、出たモンスターといえばしびれくらげマリンスライムくらいであった。

平和な海にかもめの鳴き声が響き、人々がおびえることなく生きている姿を目の当たりにして、イザたちは自分たちの世界のことを思い出す。

「俺たちは…はやくラーの鏡を手に入れなきゃ」

ただ、ラーの鏡を手に入れても、また壊されてしまうことだけは避けなくてはいけなかった。どうすればいいのか…
そう思ってぼんやりとバハラタの宿で日が暮れるのを待っていると、部屋の戸を叩く者が居た。
この世界に知り合いはほとんどいない―――警戒したイザたちは顔を見合わせ、部屋の中に居たチャモロとミレーユが武器を手に取って戸の脇に隠れた。

「はい―どちらさまでしょう」

イザが戸を開けると、そこには大柄な男が立っていた。
年は四、五十歳だろうか。年よりも目を引くのはその外見だ。
総髪に鬚髯、我の強そうな…自信に満ち溢れた野性味溢れる男である。顔は、眉が濃くて目も大きい、あちこちに戦いの傷であると思われる痕が見えた。
服は旅慣れた装束で、腰には大振りな剛剣がさしてある。
戦士というよりは、盗賊に見えた。

「俺は、カンダタ。ルビス様のお客ってーのはあんたたちかい」
「!」

驚くイザの肩を押して部屋に入った男は、しーっと指でイザたちを黙らせ、ミレーユとチャモロに武器を下ろすよう手で指して戸を閉めた。

チャモロが疑い深く尋ねる。
「ルビス様の…と言う割に、失礼ですが、そちらは盗賊のようにお見受けします」
「ああ、元盗賊だよ」
カンダタは両手の手のひらをぱっと見せて、隠し持ってるものがないことを見せた。
「俺はもともと義賊だった。王様の冠盗んだり、貴族の屋敷を襲ったりしてた。
そんなとき、勇者アレルにやられて改心したのよ。
あいつの親父には世話になってた。
その親父が死んだって聞いて、俺も黙ってられなくてな。
アレルが魔王を倒しにいくって聞いて、いろいろ情報集めしたりしたもんよ。
ルビス様が俺の枕元に現れて何か言ってったのはその魔王を倒したって時と、ついおとといだ」

カンダタの眼光が鋭くなった。

「この世界に客人が訪れている、ラーの鏡を探す手伝いをしてくれ…と」

「元盗賊の出番、というわけね」
と、ミレーユ。

「ああ…そこから俺なりに少し調べてみたんだが、アレルたちがサマンオサから持ち出した後どうなったのかがいまいちはっきりしねえ。
ひとつ、サマンオサの洞窟に戻した。
ふたつ、サマンオサの王族が保管している。
みっつ…これが一番最悪だ、行方がわからないアレルたちの誰かが持っている」

「あまり長い時間がかからないといいけど…。
私たちがこっちに来ている間むこうの時間はどうなってるのかしら」
「それはしらねえが、どのみち鏡がないと駄目なんだろ。
潔くあきらめて鏡に集中したらどうだ、姐さん」
「そうね…」

カンダタは鼻をかいた。

「ともかく、サマンオサの城にあるかどうかはもう明日の朝にはわかる。
城にないようなら洞窟にいってみるっきゃねえ。
今日は休んで、明日から大急ぎでサマンオサに向かってもらうぜ」