幼少ぱられる2

「はぁ、はぁ…!」

少女は走っていた。
通気口を抜けて埃と煤にまみれてしまった白いドレスの裾を持ち、足は裸足で、ガンディーノの城が遠く見えるようになる所まで必死に走り続けていた。

小高い丘の上まで走ると、ガンディーノの城下町が見えた。
そして反対側には港町が見える。
ミレーユは町に残してきた弟と両親、そして誤解したままの親友のことを思って胸を押さえた。
かちゃ、ミレーユの手首で何かが音を鳴らした。
ミレーユの手首についていたのは白い玉を二つ、高級そうな丈夫な紐で結びつけた腕飾りだった。

シェリスタからもらった腕輪で逃げてきちゃったけど、これは大丈夫だったのね」

突如現れて、目の前で透明になって消えた王子様がくれた腕飾りだ。
それを見ていると、案外これからなんとかなる気がしてきた。
ミレーユは自分の身を見直した。
シェリスタがくれた腕輪以外の装飾品は無事だ。
ギンドロが用意してくれた飾りと服を売って船に乗って、グランマーズに助けを求めにいこう、そうミレーユは硬く誓った。

その数年後、ミレーユは額にサークレットを嵌め、魔法使いギルドで調達した衣装を身に着けて立ち上がる。
そのとき、腕飾りはしていなかったが、似たような白い玉のイヤリングが耳に下がっていた。