(閑話)妖艶な月 キスキル・リラ

暗闇が人々を夢へと誘う時間、勿論レイドックの城は寝静まっていた。

そういえばついこの間、
現王の唯一の跡取り息子・イズュラーヒン王子が結婚したので、
彼と后の寝室について話し合われた。

レイドック城は3階が王の間、王の間に隣接するように王と王妃の部屋がある。
2階は兵士の詰め所であり、1階は食堂や書庫などになっている。
つまりレイドック城は広い中庭こそあれど全体的に狭い。
王族だけでなく貴族たちも住むには狭すぎる…

このような造りはレイドックの城が小国であったころの造りのままであるらしく、
レイドックの城は最低限の人数しか泊まることができず、
増えた人間は城の裏庭から少し行ったところにある家の群れ――
離れとも別荘とも言うのであるが、そこで暮らしていた。

しかし、今回は貴族ではなく王子とその妃の部屋をどこにするかという問題である。

王子時代は王子の部屋は2階の中でも3階に一番近い所にあった。
この場所はあまり広くなく…何が問題かというとダブルベッドを置く広さに問題があるということだ。
王子は昔から自分の部屋をあまり使っておらず、
寝る時に戻ってきて起きたら出かけてしまっていたので広さは気にならなかったという。
彼の部屋には今も子供用ベッドが一つと
彼が城で暮らしていた頃に愛用していたブーツや剣が置かれているだけだった。

旅慣れて野宿すら厭わない王子と妃は、別荘のほうで構わないと言い気にした様子もないが、
レイドックの官たちはたまったものではない。
王子たるもの城の何かをどかしてでも城に住むべきとの声が多かった。
しかし、まあ、結局の所、王が王子の好きにさせたので
王子と妃は離れの別荘に住むことになったのであった。



三方向から水に囲まれる美しい壮健な城、レイドック
その北に、城よりも小さく囲われた区域があった。
レイドックの貴族や王族の別荘が集まる地域である。
その一角、湖に近い二階建ての一軒家に王子と妃は住んでいた。

一階には生活スペースが、二階には夫婦の寝室がある。
寝室のベッドの上でイズュラーヒン王子――イザはタンクトップに半ズボン姿で寝転がっていた。

「うー、難しいな〜…」

手には経済学の本が握られている。
毎日こうして王になるための知識を詰め込む日々が続いていた。
イザは何かを学ぶことは嫌いではない、しかし本に噛り付いて習得することは苦手だった。

「経済も体で覚えられればなあ」

朝から晩まで経済や哲学、政治と机に貼り付けられる日々を送って疲れているイザは、本を持ったまま布団に顔を突っ伏して寝始めてしまった。

(つづく)


※王子時代は王子の部屋は2階の中でも3階に一番近い所にあった。というのはオリジナル設定です。だってそんな部屋実際ないもの!(苦笑)

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レイドック王子の妃となったミレーユは最近少し不満を抱えていた。
それは少々口に出すのが憚られることだが、イザが詰め込み学習で疲れて夜に相手をしてくれないことだった。
結婚前はイザの方からミレーユにあれこれしてきたり求めてきたりしたものだったが、最近はイザが疲れて寝てしまい、ミレーユは隣で一人欲をもてあましていた。
今日こそは眠くても付き合ってもらおう、ミレーユは丹念に体を洗うとバスローブを体に巻きつけ、階段を上った。

「イザ?」

やはり予想通り、イザはベッドの上で寝てしまっていた。
手には経済学の本が握られているが、顔は布団と仲良くなっている。

ミレーユは彼の手から本を取ってベッドの脇の棚に置いた。
そして寝ているイザの顔を横から眺める。

「イザ…」

寝ている彼の上にミレーユは体を重ねた。
かさばるバスローブを取り去ってからいくつかついているランプの火を消し、少し暗くする。

「疲れてるのは知ってるわ、でも…」

ミレーユはイザの首筋に舌を這わせる。
風呂上りのさっぱりした男の肌を舌で味わいながら喉仏を舐め上げると、イザが唸った。
ミレーユは手早くタンクトップと半ズボンを脱がし、残ったパンツも気にせずに剥ぎ取る。
裸になったイザに自分の体を巻きつけてもイザは起きず、眠ったままだ。

「やぁね、人がここまでしてるのに起きないなんて…」

ミレーユは思った、いっそのこと起きないなら最後まで起きなくてもいいと。
彼女の手はイザの股間に伸び、ぺたんと力なく縮んでいる性器を掴む。
ミレーユの白い手が上下にさすると、イザの物は徐々に張り詰め、上を向き始めた。

「男の人の体って不思議ね…ふふ…」

寝室にはミレーユの楽しそうな声が響いた。
こんなことをされても気持ちよく寝ているイザを恨めしく思ったミレーユは、彼の物を思い切って口に含んだ。
舌で先端を嘗め回すと、イザが唸るのが聞こえる。
ミレーユはさらに攻勢を強めた。
手で根元をしっかりと握り、口は強めにイザの物を吸って刺激を与えていく。

「はあ、疲れちゃった…」

ミレーユはイザの棒から口を離した。
唾液を手で拭い、イザの顔を確認するが、イザはいまだ夢の中であってまったく目覚める気配が無い。

「なによ、ハッサンみたいに気持ちよく寝ちゃって…」

ミレーユは少し戸惑った様子だったが、思い切って腰を上げた。
ベッドの中央に大の字にイザを寝かせ、そそり立った彼の物に上から自分の体を押し当てる。

「んっ…、だめ、やっぱりまだ入らない」

少し広げただけで痛みを感じたミレーユは一度体を離した。
そしてイザの顔を見ながら自分の秘所に指を差し入れると、ぐちゅりと卑猥な音が耳に入ってきた。

「はぁ…イザぁ…っ、イザが欲しい…っ」

両手で秘所の入り口を一生懸命広げる。
イザがよくするように、指を一本入れて中をかき回した。

「あん、ああ…ん」

一本で物足りなくなったミレーユは足を大きく開き、寝ているイザを見ながら二本の指を秘所に差し込んだ。
残ったもう片方の手で股間を揉み、ミレーユはひと時自分の世界に浸った。
少し満足したのかミレーユは上気した顔で指を引き抜き、引き抜いた自分の指を見る。
透明な液体が指を滴っているのを見てミレーユは満足げに微笑むと、膝で立ち上がってイザの物を跨いだ。

「今度こそ入れるわ…」

ミレーユはイザの物を手で支え、自分の股間にあてがう。
ゆっくりと体を降ろしてイザの物を体内に取り込んでいく。

「イザの、おっきい…うふふ…っ」

すっかり根元まで取り込むと、ミレーユはイザの腹の上に乗った格好になった。
イザが寝ているのを確認すると、起こさないようにしながらゆっくりと腰を動かし始め、ミレーユの酔った声が寝室にこだました。

「イザ…、あん…、イザが中に入ってる…っ」




薄明かりの中、イザは目覚めたと同時に強烈な快感を感じて起き上がった。
自分の上に女が跨って腰を振っていた。
女は空いた両手で自分の胸を揉んでいる。

「ミ、ミレーユ…?」

今にも動かしたくなる腰を我慢して押さえながらイザは困惑して問いかけた。

「イザ…」

胸を揉んだまま、ミレーユはイザを見下ろしてきた。

「イザが疲れてしてくれないから、わたしが…」

ふふっ、とミレーユは微笑んだ。
イザは思った、ミレーユに何か乗り移ってしまったのではないかと。

「イザも、気持ちいいでしょ…っ?」

妖艶に微笑むミレーユは白い裸体を乗り出した。
長い金色の髪が湿っている。風呂から出たばかりのようだ。
髪がイザの頬に触れ、イザはミレーユの狂態に胸が高鳴った。

「もっと気持ちよくしてあげる…んっ」

ミレーユはベッドに手をつき、中に入れていた物を出し入れし始めた。

「うあっ…」

イザは快楽に思わずうめき声を上げた。

「イザ…いい…?」

ミレーユが腰を素早く上下に動かした。

「ああ、いいっ、いいよっ…!」

イザはたまらなくなって腰を突き上げた。
ミレーユが喜びの声を上げるので、イザは遠慮なく思うままに腰を突き上げた。

「イザぁっ、もう…ああん…っ」

ミレーユが喘ぐと、中がぎゅっと締め付けられ、イザはミレーユの中に熱い物を放った。
荒い息を吐くミレーユが立ち上がると、彼女の秘所から白い液体が垂れ、彼女の美しい太ももを伝っていく。

イザは息を整えながら起き上がり、彼女の肩を抱いた。

「そんなに、我慢できなかったの?」
「できなかったわ…」

腕の中のミレーユがイザを見上げるが、普段の恥じらいのある様子ではなく、夢魔のような妖艶な目線と微笑をイザに送っていた。

「もっと、しましょ」

ミレーユがイザの体を引いて布団に倒れこむ。
手がイザの顔を包んで唇が唇を襲う。
イザはミレーユに欲情してすっかり目が覚めてしまった。

「珍しいよな…ま、いいか」

イザはミレーユの口内を舌で舐め回し、逃げる舌に吸い付いた。
苦しげにミレーユが息をするのを見て舌を離すと、
今度は同じことをミレーユにされてイザは苦しげに鼻で息を繰り返した。

ミレーユの胸を外から中にしまうように撫でて、先端を口に含む。

「あん…」

先端を口の中で押しつぶすように愛撫すると、ミレーユの口から喘ぎ声が途切れなく漏れる。
イザはミレーユの秘所に自分自身を沈め、抜き差しを繰り返す。

「は…っ、ミレーユ…っ」
「イザぁあん…」

繋がった場所からはぐちゃりぐちゃりと粘着質な音が響き、ひっきりなしにミレーユの喘ぐ声がイザの耳を刺激した。
喘ぐミレーユの顔は普段のポーカーフェイスから想像もつかないような蕩けた表情で、唇からはイザ、イザと名を呼ぶ音が発せられる。

「気持ちいい…?」

イザは問う。

「気持ちいい…っ、イザぁあっ…」

イザは腰の動きを加速させ、ミレーユの奥深くに精を解き放った。

二人は夜が明けるまで交わり続け、朝二人で風呂に入り、互いに腰が痛いと苦言を述べるのであるが、その表情は嫌そうではなくむしろ楽しそうであった。