SSS「記念日じゃなくても」
※SSS=超短い小説
時系列としては最終回より後です。
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コトン、揃いの湯のみを置く音がした。混色した微妙な抹茶色をして不恰好だがどことなく安心する。これは二人で旅行に行ったとき製作体験でろくろを回して作った物だったり。
湯のみを手にしながらSDカードの整理をしていると、懐かしくなって一枚の写メを探した。見つけて、ふっと笑っていると、横に気配を感じた。
「ほら、これキミだよ」
「ちょ!何でこれあるんですか!」
会ってからそれほど経ってない頃、まだ蛍が手嶋に夢中だった頃だ。六郎が押しかけてきた日の朝ふざけてツーショットで撮った写真がパソコンの画面に映っている。蛍の髪の毛を上につかんでちょんまげにして写っている写真だ。自分はあの頃にしては楽しそうで、蛍は困った顔だ。
「ある意味、この頃から俺たちはあまり変わってないってことか」
「イヤ、あたしは変わってますって」
「妙に風呂が長いと思ったら血だらけだったりとかそういうコトは無くなったが」
「いつまでそのネタ引きずるんですかっ」
蛍は嫌がりながらも嬉しそうだ。
「取っといてくれてるんですね、そんな写真でも」
「言ったじゃん、キミが最初に泊まってきた日にはチリッと来たって…」
「誠一は、あたしにラブ〜なそぶりなんてちっとも見せなかったですが?」
「見せてたまるか。調子に乗る癖に」
パソコンを閉じ、伸びをした。
「蛍との毎日が、俺の楽しみだよ。今も昔もね」
「…ったくズルいこと言ってないで」
ぐいっと腕を引かれる。横顔が赤く染まっているのをみて、にやりとした。
「六時の特売に行かなきゃ、今日お米が安いから…」
「そうだな、ビールも買ってきておかないと」
夕暮れの中、確かな手を握って後は財布一つ。どんな日も楽しみに生きていける。